Liberty
【華燭】と呼ばれる偽物。
天使を閉じ込めるほどの邪術。
とにかく。
小瓶から抜け出さないことにはとミカはもがく。
その度に紅から蒼に変わるろうそくの炎に翻弄されながら、幾度と。
こんなにアナログな、自力で解決だなんて側から見ればだいぶ滑稽なのかもしれない。
膨らんで大きくなる不安とそれに埋もれてしまいそうな希望を交互に、ミカはどうにか小瓶の蓋に手をかけた。
少し持ち上がった、今しかない!
僅かほどの隙間に体をすべり込ませようとしたとき、今までにないほどの重さを帯びた小瓶の蓋は好機とばかりにミカにのしかかる。
“私ひとりじゃ、結局どうにもできないのかもしれない”
ぷつん、と。
ミカの頭の中が不安で真っ暗になった。
彼女のそばで守ることも、祝うことひとつまともに出来なくて…。私…。
もう支えられないほどの重さを帯びた小瓶の蓋はミカの力も虚しくバタンと閉じた。
ミカの体は小瓶の外へ、片方の翼は小瓶の中へと残った。
“羽、根が……。”
小瓶の中では瞬く間に蒼い炎が広がって燃え盛っている。
天使には痛覚はないはずなのに、ミカは胸の奥に握りつぶされるかのような痛みを感じた。
もう飛べなくなった。
私は。
だめなのかもしれない。
天使として失格だ。
得体の知れない何かで胸の奥が苦しくて、
誰でもいいから助けてほしかった。
誰か。
誰かって
誰に?
3人の人間に?
無理よ。