#天使
一方その頃、彼女の知らないところで一人の天使がとにかく焦っていた。
名をミカ、という。
10月20日の守護天使を生業にして、彼女とはまぁ長い付き合いになるのだがそんなことは彼女は知る由もない。
そして、こう、なんというか、“天使だけど厳粛な感じで受け取ってほしくないのよね”とミカは言う。
もちろん仕事はきっちり行うが、優しさと柔軟さと少し多めの気まぐれを含んだ、まぁ彼女とやけに気が合いそうな天使なのだった。
そんなミカがどうして焦っているのかというと、“彼女の祝宴を執り行いなさい”と大天使アニエルから遣わされたからである。
小さな天使であるミカの元に大天使が、しかも“ひとりのことではなくふたりのことだから”とアニエルから直々に命令が下りた、
言うなれば“なんとしても”なのである。
“大天使も真ん中バースデーなんて考えるんだ”と内心笑ったのはミカの名誉のためにも一緒に秘密にしてあげてほしい。
さてこの重大任務を前に、
「喜び」「人々が美しく輝く」ことをサポートするアニエルの名の下
「理想を実現していく」自身の性分の下
ミカは燃えていた。永遠を誓うキャンドル…華燭のように。